辻 協
Kyo Tsuji
植物が器の形になり釉薬になる
《白椿釉入子・玉椿》の白椿釉とは、八丈島に自生する椿からの灰を用いた釉薬である。器の形は割山椒の向付からの着想を得て、中心の緋色模様や白椿という名と響き、入れ子になっているので、まるで白椿が咲き乱れる様を思い起こさせる。《貝紋大鉢・昆》は、どっしりとした力強さと焼成の技法に充実した力量を感じさせる作品である。
「かつて、文学による複数への伝達をなせなかったはるか原始の頃の“もの” を想うときそこには物への無言の感応だけで充分であったにちがいない。そしてそれは各時代時代のおのずと湧き出た美しさを人々の間に伝え、それなりの自由な在り方を、生活目的から、“物”に含ませてきたようにおもえるのである」
辻協「物つくり」『現代日本の陶芸第12巻「用のデザイン」』講談社(1983)
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