北村 純子
Junko Kitamura
印を押し続けることは、みずからの意識を刻むこと。
やわらかい粘土に、印を押していく。この技法は、三島手(みしまで)と呼ばれる。粘土の表面は、印を押せば、へこみができ模様が現れる。印を押すことにより、微妙に凹み土がやわらかさを垣間見せるその一瞬が、北村の好きなところだという。コンパスを使うなど法則性は持たせるが、おもには意識を集中させて、印を押し表面を埋めながら、模様は決まっていく。小さな模様は、いくつかが集まって集合体になり、模様は繰り返されながら、具体的な模様を描くかと思えば、やがてその規則性を失いながら、重なり、泡となり消えていくような、有機的な生成流転の姿が、刻まれている。もともと、彼女は染色を学びたいと思ったというように、平面の仕事に興味があった。それゆえ、形態は単純にシンプルなフォルムを選んで、白と黒の繊細な模様を際立たせてきた。《ダブル・ウォール》のシリーズは、器の内側と外側の装飾とフォルムが、空間に響きあう美しさをみせている。
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